志村貴子『放浪息子』



 志村貴子の『放浪息子』(ビームコミックス)全15巻を、仕事上の必要があって一気読み。

 積み上げたコミックスを寝っ転がって読んでいる姿は、傍目にはボーッと遊んでいるようにしか見えないだろう。
 「年末進行で忙しいとか言ってるわりには、こいつヒマそうやな」と思われている気がして、家人に「これ、仕事で読んでるからね」と、しなくてもいい言い訳をしてしまう(笑)。

 ちなみに、私はこんなのも書いているのです。

 先ごろ、ゲイ・エロティック・アートの巨匠・田亀源五郎の初の一般誌連載マンガ『弟の夫』が、「文化庁メディア芸術祭」のマンガ部門で優秀賞を獲得した。

 時代は変わったなあ、と感慨深いわけだが、LGBT(性的少数者)の問題を先駆的に取り上げたマンガといえば、なんといってもこの『放浪息子』である。
 連載当時、『コミックビーム』で読んではいたものの、最初から最後まで通しで読んだのは初めて。改めて素晴らしい作品だと思った。

 「女の子になりたい男の子」と「男の子になりたい女の子」が小学校で出会い、中学・高校と進んでいく年月を、10年超の長期連載でじっくり描いた作品。「LGBT大河マンガ」というか、「LGBT群像劇」というか……。

 主人公たちが性的アイデンティティをめぐって悩み、葛藤するさまが描かれてはいるが、少しも「声高な感じ」がないところがいい。
 「LGBT」という言葉も、「性同一性障害」という言葉も、作中ではただの一度も使われていない。説教臭さもなければ、「社会問題を扱ってる、啓発的で意識高い系マンガです」的な「どや顔」感もない。
 水彩画のような淡く美しい絵柄とあいまって、淡々としたタッチで「LGBT」の問題が描かれているのだ。

 むしろ、版元がつけた惹句のとおり、「思春期学園ラブストーリー」としてフツーに楽しめる。そこがよい。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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