鈴木良雄『フルーツ宅配便』



 鈴木良雄の『フルーツ宅配便』1巻(ビッグコミックス)を、Kindle電子書籍で購入。

 『ビッグコミックオリジナル』連載中の、地方都市のデリヘルを舞台にした連作短編シリーズ。ツイッター上で、「エロくない、泣けるデリヘル・マンガ」として話題になっていたので買ってみた。

 高名なジャズベーシストと同姓同名の作者は、昨年に「ビッグコミック&ビッグコミックオリジナル合同新作賞」(新人賞)を受賞しているから、このマンガが初連載で初単行本なのかな? そのわりには手慣れた作画と構成で、マンガ家としての個性がすでに確立されている印象だ。

 舞台となる地方都市ははっきり特定されていないが、茨城・群馬・栃木あたりのイメージ。海が出てくるから茨城か。
 デリヘル「フルーツ宅配便」の見習い店長となる主人公の「サキタ(咲田)」に、オーナーの「ミスジ」は次のように言う。

 都会のデリヘルと違って、ここらじゃ面接でかわいい子来る確率低いんだ、これが。



 この言葉どおり、毎回のサブ主人公となるデリヘル嬢たち(※)は、派手な「ザ・風俗嬢」というイメージから遠く、みんなどこかビミョーでワケアリで、地味で貧しげだ。しかし、その“くすんだ感じ”こそが、類似作にはない「味」になっている。随所でオフビートなユーモアがはじけるのも楽しい。

※店名が「フルーツ宅配便」なので、嬢の源氏名はゆず・レモン・スイカ・ブドウなどの果物名であり、その名前が各編のタイトルとなる。

 最近新書でよくある、「貧困女子の問題をフーゾクの世界からえぐってみました」的なルポに近い色合いも、ないではない。版元による「内容紹介」を見ると、そういう角度でこの作品を売りたがっているようだ。
 だが、実際に読んでみれば“社会問題を告発する”というトーンは希薄で、もっと「人情話」寄りである。

 ビッグコミック系の作品で言うと、斎藤なずなの初期作品あたりを彷彿とさせる、ウェルメイドな短編になっている回が多い。
 フーゾクの世界を、煽情的にならず淡い人間ドラマとして描き出す手際は、新人離れした鮮やかなもの。続巻を買いつづけることに決めた。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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