中野信子『サイコパス』



 昨日は都内某所で、取材兼打ち合わせが一件。
 行き帰りの電車で、中野信子著『サイコパス』(文春新書/842円)を読了。

 文春新書は、タイトルに飾り気やアクがなさすぎて損をしていることが多い。本書も、あまりにそっけないタイトルだ。まあ、逆にそのそっけなさを「潔い」と感じる人もいるだろうが。

 本書は、本文の前に構成者の名が明記されている。ライターの飯田一史氏が中野さんにインタビューして話をまとめたものなのだ。一般読者はそういうことを意識しないだろうが、私は仕事柄、構成者が気になる(ライターが構成した本であっても、構成者の名は出さないケースも多い)。
 本書の飯田一史氏は、じつにうまいまとめ方をしていると思う。

 これは、サイコパスの概説書として上出来な本だ。
 サイコパスの概説書としては、ロバート・ヘアの『診断名サイコパス』や、マーサ・スタウトの『良心をもたない人たち』あたりが、すでに「定番」としてある。ただ、2冊とも10年以上前の本だから、その後のサイコパス研究の進展がフォローされている本書のほうが、いまから読む最初の概説書としてはふさわしいだろう。

■関連エントリ→ マーサ・スタウト『良心をもたない人たち』

 心理学・脳科学を中心としたサイコパス研究の成果が手際よくまとめられており、読み物としてもなかなか面白くできている。
 著者の中野さんは脳科学者だから、第2章「サイコパスの脳」が、本書の「ウリ」ということになろう。

 ただ個人的には、「なぜ人類のなかにサイコパスのような個体が、一定の割合でいるのか」を考察した第4章「サイコパスと進化」を、いちばん面白く読んだ。

 サイコパスが淘汰もされず、爆発的に増えることもなく、一定の割合(研究によって幅があるが、だいたい1%前後)でいるということは、“人類という種の繁栄のためにサイコパスが必要だった”ということになる。
 その必要性とはなんだったのかを探っていくうちに、「なぜ人類は『心』を持つようになったのか?」を解く鍵につながっていく……という展開がスリリングである。
 
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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